高次脳機能障害の等級が認定されないときは| 横浜で『交通事故』に強い弁護士

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高次脳機能障害の等級が認定されないときは

  • 文責:所長 弁護士 湯沢和紘
  • 最終更新日:2023年3月24日

1 高次脳機能障害が認定されるための三つの要素

自動車賠償責任保険において、事故による高次脳機能障害を原因とする後遺障害を認定するに当たり、以下の三つの要素について検討されるものと考えられます。

  1. ⑴ 交通外傷による脳の受傷を裏付ける画像検査の結果(画像データ)があること
  2. ⑵ 一定期間の意識障害が継続したこと
  3. ⑶ 被害者に、一定の異常な言動等が生じていること

高次脳機能障害の等級が認定されない場合、高次脳機能障害を原因とする後遺障害それ自体が認定されていない場合と、高次脳機能障害を原因とする後遺障害であることは認定できるが、認定すべき等級が異なる場合の2つが考えられます。

2 高次脳機能障害を原因とする後遺障害が認定されなかった場合

上記三つの要素のうち、⑴の「交通外傷による脳の受傷を裏付ける画像検査の結果(画像データ)があること」という要素に対しては、自動車賠償責任保険は、事故後の脳全体の萎縮の事実と、事故後3か月程度での萎縮の固定を確認した場合には、事故による脳神経の損傷を認めるとの対応をしています。

上記の対応に基づく認定をしてもらうためには、事故直後の脳の画像と、その後の画像との比較により、脳の萎縮を確認する必要があります。

⑵の「一定期間の意識障害が継続したこと」の事実がないのであれば、要素を欠くことになるので、高次脳機能障害の認定がされない可能性があります。

これに対し、「一定期間の意識障害が継続したことの証拠がない」ということであれば、これを補う必要があり、その方法としては、救急搬送時の記録や、医療記録の確認などが考えられます。

⑶の「被害者に、一定の異常な言動等が生じていること」については、頭部を強打する事故であり、事故後、高次脳機能障害が生じる可能性を医療関係者から指摘されたのであれば、日々、異常な言動等の記録に努めることが大切です。

3 高次脳機能障害による後遺障害は認定されたが、被害者らが考えているよりも軽度の後遺障害であるとされた場合

⑴ 認定基準

自動車賠償責任保険における、高次脳機能障害の等級認定は、以下のとおりの基準によっています。

ア 1級

身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの。

イ 2級

著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人では外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。

身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声かけや看視を欠かすことができないもの。

ウ 3級

自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。

また、声かけや、介助なしでも日常の動作を行える。

しかし、記憶や中里力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの。

エ 5級

単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。

ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなくなどの問題がある。

このため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの。

オ 7級

一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い。

約束を忘れる、ミスが多いなどのことから、一般人と同等の作業を行うことができないもの。

カ 9級

一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの。

⑵ 認定された等級に納得いかない場合の対応

上記の基準によれば、作業状況、生活状況及び就労の可否に基づいて判断されていることから、被害者らが考えているのと異なる等級が認定された場合は、作業状況等に関する資料の追加を検討することとなります。

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